防食あれこれ
防食あれこれ
鉄無しでは考えられない現代社会
私たちの身のまわりには多くの金属製品、特に鉄を原材料とするモノが多種多彩に活用されています。大きな建造物(橋・高速道路・塔・建物)やライフラインを支えている水道やガスなどのパイプライン、生活に便利さや快適さをもたらしている電気製品類や機器・用具、暮らしにうるおいと楽しさをもたらすレジャーなどの分野でも数多くの鉄製品が使われています。私たち人類の進歩は鉄の活用の歴史とともにあるとも言え、現代社会において鉄やその製品が無い状態などはまったく考えられない存在です。
鉄がサビるのは宿命的性質
しかしながら、鉄(製品)は、自然環境のまま放置すると、サビる(腐食する)という宿命とも言える性質があります。簡単に言えば、もともと鉄の原材料である鉄鉱石は、自然界においては安定した酸化物であり、そこから酸素を取りだして鉄をつくるのです。こうしたできた鉄は、酸素を取り入れてもとの安定した状態である酸化物(に似たもの)に戻ろうとします。この安定状態の戻ろうとする現象がサビなのです。
鉄製品にサビ(腐食)が進むとボロボロになります(小さなサビて崩れた鉄片などは、だれもが見たことがあるでしょう)。そうなると(ボロボロになる前の段階で)その鉄製品が備えていた機能が維持できなくなります。それが容器やパイプなどであれば穴があいて漏れます。脚のようなものであれば支えられなくなります。たとえば鉄橋が崩れたら・・・大変なことです。ですから、あらゆる鉄製品には、サビ(腐食)を防ぐ、なんらかの防食対策がほどこされています。
大型構造物などの社会資本材や製品の長寿命化(あわせて環境との調和やデザインなど意匠性も発揮する)に欠かせないのが防食であり、資源・エネルギーの有効活用にも役立っています。
サビをいかに防ぐか――防食の基本
鉄の防食の基本は、サビ、つまり酸化を防ぐ方法になります。鉄と結びつこうとする酸素は大気中に限らず、水中(海中)や土中にも存在します。この酸素と鉄が結びつかないようにするにはどうするか? 鉄の表面をほかの材料で覆うことで酸素を遮断することです。
これが「被覆防食」と呼ばれている方法です。鉄を覆う材料を何にするか(大きくは無機材料と有機材料に分けられます)、どんな方法で覆うか(被せる、塗る、溶着する、貼着する、帯電塗着するなど)、鉄製品の用途や使用環境などを考慮して、最適な防食方法(材料と被覆方法)で(それを行うのにかかるコストも重要な要素になりますが)実施します。
また、電気化学的な防食方法として(サビは酸化であると同時に電気化学的反応でもあるため)、電気的にサビを防ぐ「電気防食」法もあります。(Q&Aページをご参照ください)
防食Q&A