防食あれこれ
防食Q&A
質問リスト
- Q01 なぜ鉄はさびるのですか?
- Q02 異種金属接触腐食はどのような現象ですか?
- Q03 海洋構造物では海生生棲物(フジツボなど)が付着しますが、
これらは鋼材の腐食に影響しますか? - Q04 防食法の種類を教えてください
- Q05 被覆防食で塗膜はどのようにさびを防ぐのですか?
- Q06 塗料には有害物質が含まれているのですか?
- Q07 塗装された鋼材の運搬・架設時の注意事項について教えてください
- Q08 塗膜の劣化機構と速度について教えてください
- Q09 電気防食法の原理について教えてください
- Q10 エレクトロコーティングとはどんなものですか?
- Q11 さびている鉄板の上から塗料を塗ってもさびが広がるのはなぜ?
(空気に接していないので、さびは広がらない気がするが?) - Q12 電位測定って何?
- Q13 陽極って何?
- Q14 何故、アルミ陽極を使うのでしょうか?
- Q15 水中ではどのように塗装するのですか?
- Q16 静電粉体塗装とは、どのような事ですか?
- 《商品メニューに関する記載》
- Q17 ポリエチレン被覆って何?
- Q18 チタン被覆って何?
- Q19 ポリウレタン被覆って何?
- Q20 断熱被覆って何?
- Q21 高強度被覆って何?
回答
Q01 なぜ鉄はさびるのですか?
A 水分と空気で覆われた地球環境において地球上の金属は金属固体であるより酸化物や水酸化物、あるいはイオンである方が熱力学的に安定しています。金属としての鉄は安定な酸化物の状態に戻ろうとしており、水分や酸素等の条件がそろえば容易に酸化物に戻ってしまいます。この酸化物がつまりさびと称されるものです。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q02 異種金属接触腐食はどのような現象ですか?
A 海水中の金属はそれぞれ固有の腐食電位を示します(例えば炭素鋼は-600mV・SCE、18Crステンレス鋼は-280mV・SCE、白金は+330mV・SCE、アルミニュームは-780mV・SCE)。
異なる金属が海水中(又は導電性溶媒)で電気的に接触していると、貴な(高い電位)金属によって、より卑な(低い電位)金属が腐食しやすい電位に高められるために後者の腐食が促進されます(電池の形成)。このような現象を異種金属接触腐食といいます。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q03 海洋構造物では海生生棲物(フジツボなど)が付着しますが、
これらは鋼材の腐食に影響しますか?
A 生物が付着した箇所では酸素供給が不足するのに対して、その周辺の未付着箇所で酸素の供給があるために、両者の間で酸素濃淡電池が形成されます。このため生物付着した箇所がアノードとなって局部腐食が進行します。
しかし、付着生物が鋼表面に不透水性のカルシウム膜(フジツボの定着膜など)を形成し、部分的に鋼材の防食効果を発現する場合も有ります。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q04 防食法の種類を教えてください
A 防食法には大きく分けて被覆防食、電気防食、耐食材料の使用、環境制御の4通りの種類があります。防食効果、コスト、施工性、メンテナンス性等、それぞれ特徴があり、ケースバイケースで使い分けされています。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q05 被覆防食で塗膜はどのようにさびを防ぐのですか?
A 鉄は酸化物、つまりさびの状態が最も安定です。鉄が腐食するためには酸素、水分などが必要です。塗膜の機能としてこれら腐食因子を鉄面に届きにくくする作用があげられます。また腐食因子が鉄面に届いた場合も、鉄を腐食しにくくする機能も兼ねそろえています。被覆防食の一つである塗装は大きく分けて下塗り、中塗り、上塗りより構成されており、総合的に防食機能を発揮するシステムも提案されています。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q06 塗料には有害物質が含まれているのですか?
A JIS規格に規定されている鉛系さび止めには、有害物質である鉛系化合物を含むものがあります。また、塗装作業性を向上する目的で、各種溶剤を含むものが広く用いられています。これらはPRTR法により取り扱いの管理をすると共に、塗膜からの溶出影響を考慮した安全な状態での使用が規定されています。 しかし、最近ではこれら有害物を含まない環境にやさしい塗料も使用されるようになっています。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q07 塗装された鋼材の運搬・架設時の注意事項について教えてください
A 全工場塗装(ファブリケーターの工場内で上塗りまですべて塗装する方式)が橋梁など大型物件でも増加しています。このため運搬・架設時においては塗膜に損傷を与えない工夫が必要です。塗膜が損傷し鋼面が露出すると、露出面積に対する塗膜面積の倍数割合で露出部に局部腐食が進行します。また損傷を受けやすい塗装系もあるので、塗装系の選定も必要です。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q08 塗膜の劣化機構と速度について教えてください
A 塗膜は一般に高分子化合物で構成されているため、化学的劣化と光(紫外線)、酸素、熱などが複合的に作用して劣化します。劣化速度は劣化因子の種類や量により異なり表層から進行する場合や塗膜厚み全体で進行する場合もあります。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q09 電気防食法の原理について教えてください
A 腐食環境中(導電性媒体)に設置された電極から防食すべき金属材料に直流電流を通電することによって、金属を腐食しない電位(防食電位)にまで変化させ防食する方法を電気防食法といいます。
海洋鋼構造物においては、防食すべき金属に電流を通電させ、腐食電位よりも卑(低い電位)にすることから、陰極(カソード)防食ということがあります。通電には防食される金属よりも卑な(低い電位)金属(腐食アノート゛として溶解)を取り付ける方法(流電陽極方式)と、不溶性(難溶性)電極を設置して直流電圧を印加する方法(外部電源方式)の2通りがあります。
海洋構造物では干満帯以深の海水や海底土中での鋼材防食として、陸上でも埋設部の鋼材防食として適用されています。
また最近では、コンクリート中の鉄筋防食としても適用されています。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q10 エレクトロコーティングとはどんなものですか?
A 海水中で金属材料が電気防食(陰極防食)を受けたことにより、その表面に海水成分であるカルシウムやマグネシウムの炭酸塩や水酸化物が沈着・析出すること、およびその石灰質被覆物をエレクトロコーティングとよんでいます。エレクトロコーティング表面はアルカリ性になり、腐食を抑制すると共にこの生成により電気防食に必要な電流密度を低くすることが可能になります。
( 出典:「海洋構造物の防食Q&A」 技報堂出版 )
Q11 さびている鉄板の上から塗料を塗ってもさびが広がるのはなぜ?
(空気に接していないので、さびは広がらない気がするが?)
A 被塗物と塗膜間にさび層が存在する場合には、塗膜の接着阻害を起こすことがあります。また、さび中に残存している水分、又は塗膜を透過して入ってくる水分、酸素などの腐食促進物質によって、腐食が拡大し、塗膜にふくれやはがれが起こる様になります。ミルスケールが残存する場合も、素地鋼材との間に生じる電位差の為、鋼材の腐食が促進され、塗膜の劣化が生じます。
従って、素地調整は塗膜寿命を左右する最も重要な要因の一つなのです。
Q12 電位測定って何?
A 海水中の鋼構造物に関しては、適度な防食電位以下の値で管理する必要があります。この防食電位を維持管理する為に、電位測定を行っています。この電位測定を行う為には、環境が変化しても安定した値を指示する電極を基準として用いております。この基準となる電極は、照合電極と呼ばれ、海水中では海水塩化銀電極、飽和甘こう電極、土壌環境やコンクリート中の鋼の電位測定には、飽和硫酸銅電極等が広く用いられております。
Q13 陽極って何?
A 電気防食工法の中で、流電陽極方式は、海水中および海底土中にある被防食体(鋼管杭や鋼矢板等)よりも低い電位の金属(鉄に対しては、アルミニウムや亜鉛等)を陽極としています。港湾施設では、アルミニウム合金陽極を被防食体に電気的に接続し、両者の電位差による電池作用によって連続的に陽極から防食電流を被防食体へ流して防食しています。即ち、陽極とは、被防食体が腐食する代りに、犠牲的に自らが腐食して、被防食体を腐食から守るものです。
Q14 何故、アルミ陽極を使うのでしょうか?
A 流電陽極方式の陽極材料には、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)陽極等がありますが、これらの陽極の選択は、それぞれの特性に応じて環境に適合したものを選ぶ必要があります。
ここで、アルミニウム合金陽極は、単位質量当たりの電気発生量が最も高く、経済性に優れ、海水および海底土中の環境に適しております。これに対して、マグネシウム合金陽極の特徴は、鉄に対する有効電圧が大きいので、主として抵抗率の高い環境などに適していますが、海水中等の抵抗率の低い環境では、短期間で消耗してしまう等の欠点がありますので、使用環境に注意する必要があります。
Q15 水中ではどのように塗装するのですか?
A 海洋構造物や水門など水中で補修を必要とする事があります。このような時には、水中硬化型塗料を海水中等で施工しております。塗料の性状としては、ペイントタイプ、パテタイプなどがあり、前者は 2mm程度、後者は、5mm程度の膜厚で塗布する事が一般的です。
ここで、水中硬化型塗料とは、一体どんなものかと言えば、主にエポキシ樹脂をベースにした塗料が多く、被塗物に塗料を水中で押しつけ、塗膜と鋼素地間の水分を押し出す事により接着します。接着した塗膜は、エポキシ樹脂の場合、水中でも架橋硬化反応が進み、塗膜となります。この成膜過程で取り込んでいた水分が塗膜から絞り出されます。そうして、形成された塗膜は、外部からの腐食性成分を溶かした水の浸入を防ぎ、良好な防食効果を発揮します。
Q16 静電粉体塗装とは、どのような事ですか?
A 静電粉体塗装の原理は、粉体塗料が静電ガンの先端或いは内部を通過する時、帯電する事により、クーロン力により被塗物に塗着するものです。粉体塗料が塗着した被塗物は、150〜200℃の炉内で10〜20分程度焼き付けられ、塗装が完了する。通常、被塗物は常温で塗料を静電的に塗着するが、事前に被塗物を予熱した状態で塗料を塗着する場合もあります。この方法は、予熱静電塗装方法と呼ばれます。現在では、世界的なVOC規制対策として脚光を浴び、静電粉体塗装用材料および塗装方法の開発が一段と加速しています。
回答 《商品メニューに関する記載》
Q17 ポリエチレン被覆って何?
A 下地処理を施し、且つ加熱した鋼材表面に、ポリエチレン材料を予め溶融するか、若しくは鋼材の余熱によりポリエチレンを溶融させる事により、鋼材表面をポリエチレン樹脂で被覆したものです。主に、配管分野(水道用配管、プラント配管、ガスラインパイプ等)や海洋構造物等の杭分野(鋼管杭、鋼矢板等)で主力として使われています。プラスチックの中でも、ポリエチレン樹脂は汎用樹脂でありますので、比較的安価で、且つ、重防食材料としての機械的、化学的な安定性が優れています。
Q18 チタン被覆って何?
A 現在、主に使われている重防食被覆鋼材は、有機材料で被覆されています。それに対し、海洋構造物等で、更なる長期に亘るメンテナンスフリーを考慮した場合には、有機材料では、その環境におけるさまざまな劣化が懸念されてきます。そこで、最近、有機材料の被覆から金属による被覆への期待が高まって来ています。金属の中でも、耐食性に優れるチタンを用い、鋼材表面に巻きつけたり、張り付けたり、直付溶接したりした被覆がチタン被覆です。まだ、生まれて間もない被覆ですが、今後更に改良されながら、進歩がめざましく、注目されている被覆です。
Q19 ポリウレタン被覆って何?
A ポリエチレン被覆同様、現在の重防食被覆の主力をなす被覆です。ポリエチレン被覆が予め、ポリエチレンを接着させる為に、鋼材の予熱が必要ですが、ポリウレタン被覆は高い予熱は必要ありません。そして、ポリウレタン樹脂は、液状塗装でありますので、複雑形状の鋼材に対しても重防食塗装を施す事ができます。その為、ミル被覆だけでなく、現地のフィールド施工も可能です。
Q20 断熱被覆って何?
A 流体輸送物の温度を鋼管外面の環境温度に大きく影響されない為に、熱が伝わりにくい被覆を施す場合があります。それが、断熱被覆です。現在、主に用いられている被覆は、発泡ポリウレタン樹脂を断熱層として被覆してあるものや、珪酸カルシウムなどの無機物を2重管等の間に詰め込んでいるのが主流です。
Q21 高強度被覆って何?
A ポリエチレン被覆やポリウレタン被覆は、海洋構造物等で多く用いられていますが、その構造物を施工する際のハンドリング傷が生じる場合があります。又、施工後に異常な衝撃や摩耗(例えば、流木が絶えずぶつかる事や、浮き桟橋でガイドロールが常に擦動している箇所等)では、重防食被覆が損傷する場合があります。こうした事が懸念される場合に、通常の重防食被覆の表面にポリエステル系FRPを塗装して、被覆表面硬度を硬くし、且つ衝撃強度を高くしたものが、高強度被覆です。